波動は、グラフだけでなく
式でも表現できます。
基本的な操作や考え方は、
グラフのときと同じです。
波動の式が関係する問題では、
以下のようなテーマがよく出題されます:
波の反射
進行波・反射波の合成
定常波の式(合成波)
これらはまとめて理解しておくと、
得点源になります。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、
何回か演習すれば、
必ず理解できるようになります。
グラフと対応させながら式を扱うことで、
「波の振る舞い」が
イメージしやすくなり、
式の意味もつかみやすくなります。
「式とグラフを対応させて理解する」ことが大切
「波の向き(右進・左進)や時間変化」を式で表すことを意識する
定常波・反射波などのパターン問題は慣れがカギ!
ある基準の位置(たとえばx=0)での
時間変化 y(t)がわかっているとき、
任意の位置x における波の変化は、
「その波がx まで進むのに
かかる時間(遅れ)」
を考えて求めます。
波が速さV で右向きに進むとすると、
位置x に波が到達するのは、
時間 t0=x/V秒後です。
したがって、
位置x における変位は、
「元の波を t0 だけ遅らせたもの」
になります。
波の変位を式で表すときには、
次のように位置と時間の
両方を変数とする表記を使います:
y(x,t):
x:位置(どこで)
t:時間(いつ)
つまり、「ある場所で、ある瞬間に、
波がどれだけ変位しているか」
を表す関数です。
波の時刻 t=0 の
y–x グラフ(波形)が与えられたとき、
その波が右向きに速さV で
進んでいるとすると、
任意の時刻 t における波の形は、
「波形が右に Vt
だけ平行移動した形」
になります。
波は右向きに進むので、
時間 t 経つと、
波形全体が右へ x=Vt だけ進みます。
このとき、位置x における変位は、
もともと 位置 x−Vt にあった波形と
同じになります。
時刻 t における波の変位は:
y(x,t)=y(x−Vt,0)
これは、x=0 での波形を
右に Vt だけずらしたという意味です。
波動の式の考え方は、
「進む向きにあわせて
時間や位置をずらす」という
基本ルールを覚えてしまえば大丈夫です。
あとは実際に問題を解いて、
理解を深めるだけです。
ある点(x=0)での
y–t グラフ(時間変化)が
与えられたときに、
任意の位置x における
y–t グラフを求める問題です。
今回のグラフは、
横軸が「時間」になっているので、
これは "y–t グラフ
(時間変化のグラフ)"です。
問題文に「原点での」とあることから、
このグラフは、位置 x=0 における
変位の時間変化、
すなわち、y(0,t)を
表しています。
波動を式で表すときは、
位置x と時間t を変数とした
y(x,t)で表すとy(0,t)です。
まず、与えられた y–t グラフから、
以下の情報を読み取りましょう。
T→2πを表すので、
1秒では、 2π/T となり、
t秒では、2π/T *t が位相となり
解答になります。
2)
今度は、任意の位置x における
波の式を求めます。
x = Vt より t = x/V 先にいます。
x=0で表現するには、
t = x/V 分遅らせ
y( x,t ) = y( 0,t- x/V)
で、求めます。
t - x/V をそのまま
代入して計算します。
波動の式に関する問題では、
次のような「ずらし」の
操作がよく出題されます。
1.任意の位置 x における式
を求めるときは:
→ 波が到達するまでの時間
x/V を「引く」
2.ある時間におけるグラフ
(y–x グラフ)をずらすときは:
→ 位置をずらす
(波を平行移動)
たとえば、t=0 の y–x グラフから、
時間t における波を描くには:
x→x−Vt に置き換える
(波を右に Vt 平行移動)
・「時間をずらすときは、
位置の分だけ遅らせる(引く)」
・「位置をずらすときは、
波が進む方向にずらす(足す・引く)」
波動の式においては、
「時間を引く」 or
「位置を引く(もしくは足す)」
という操作を、
波の進行方向に応じて行えばOKです。
この考え方を理解しておくと、
グラフ・式・定常波・反射の問題に
一貫した方法で対応できます。
波の式に関する問題では、
反射の知識とセットで出題されることが
非常に多いです。
したがって、
反射の基本ルールを
しっかり押さえておきましょう。
波が端で反射するとき、
反射の仕方には2通りあります。
端が動かない(固定されている)
反射波は上下が反転する(位相がπずれる)
反射点の変位は常に 0
端が自由に動ける
反射波は上下反転しない(位相はそのまま)
反射点の変位は最大になることもある
「自由端」「固定端」という
名称の意味を知っていても、
それだけでは問題は解けません。
物理の問題では、
次のような
波の振る舞いを理解・記憶することが重要です。
波が右向きに進み、
位置 x=L に自由端があるとき、
その壁で波は自由端反射を起こします。
波がそのまま通過したと
仮定して描いた波を
「通過波」と呼びます。
自由端反射では、
この通過波とまったく同じ形の波が、
点 x=L で反射波として戻ってきます。
※ 上下反転せずに返ってくるのが
自由端反射の特徴です。
→ イメージしやすい反射です。
入射波と反射波が重なると、
それらの変位の和をとって
「合成波」ができます。
位置x における合成波の変位は、
入射波の変位+反射波の変位で計算できます。
もし、どちらかの波が y=0 なら、
もう一方の変位がそのまま合成波になります。
進行波:同じ方向に進む2つの波の合成波(例:入射波+通過波)
定常波:逆向きに進む同じ波(周期・波長・振幅が等しい)の合成波
定常波では、
波が動いていないように
見えるという特徴があります。
節(ふし):振幅が 0 になる点
腹:振幅が最大になる点
これらは、波長 λ に対して:
節と腹はλ/4 ごとに交互に存在します。
反射点(端点)は「自由に動ける」ため、腹になります。
よって、位置 x=L は振幅が最大になる点(腹)です。
波が右向きに進み、
位置 x=L にある固定端で
反射される場合を考えます。
波がそのまま進んだと仮定して
描いた波を「通過波」と呼びます。
固定端反射では、
この通過波を
上下反転(変位を -1 倍)
させた波が「反射波」になります。
通過波:入射波と同じ波
反射波:通過波を上下反転させた形(y → -y)
これは、
固定端では変位が常に 0になる
(=動けない)ことを考えると自然です。
入射波と反射波が重なってできる波を
「合成波」といいます。
この合成波は、周期・波長・振幅が等しく、
逆向きに進む波の合成になるため、
定常波になります。
・固定されている端(反射点)は、
動かないので
→ 常に変位が 0(節)になります。
・節と腹(振幅最大の点)は、
波長λ に対して:
・節:動かない点(振幅0)
・腹:最大に振動する点(振幅最大)
・節と腹は λ/4 ごとに交互に現れる
固定端反射は、教科書・問題集でも
作図問題としてよく出題されます。
次のようなステップで描けるようにしておきましょう:
1.通過波を想定(上下反転前)
2.通過波を上下反転して
反射波を描く(左向き)
3.各位置での変位の和をとって、
合成波(定常波)を描く
波が端で反射する場合、
端の状態によって波の振る舞いが変わります。
特に、固定端反射と自由端反射では、
波の向きや符号、位相のずれに
違いがあります。
・反射点の変位:常に 0(動けない)
・反射波は、上下反転(符号が逆になる)
・数式で表すと、位相が π(180°)ずれる
つまり、sin(θ) →
−sin(θ) = sin(θ+π)
または sin(θ−π) としても同じ意味です。
📌 作図では上下反転、
式では「位相を π ずらす」と覚える!
・反射点は動ける
(反射波は上下反転しない)
・位相のずれは なし
・数式では、
反射波はそのまま使う(符号変更なし)
「反射点から最初の節(または腹)の位置は?」
「定常波の節が何個あるか?」
「ある点が節になるための条件(長さと波長の関係)は?」
👉 波長 λ と、波が伝わる範囲(長さ)が
与えられたら、
節や腹の個数・位置を
簡単に計算できます。
波動の式化において、
反射に関する問題は必須事項のひとつです。
特に、反射波および合成波(定常波)の式を
導出できることが重要となります。
これは頻出かつ得点源となるため、
確実に身につけておきましょう。
しっかりと理解しておけば、
出題された際に確実に
得点できる分野になります。
最初は難しく感じるかもしれませんが、
何度か演習を重ねることで
決まった操作として自然に身につきます。
例題で説明することにします。
入射波、反射波の式化の問題です。
1) 入射波は、式化でやった事柄になります。
2) 反射波の式化です。
対称位置からやる方法もありますが、
折り返しがわかりやすく思えます。
1)同様に考えます。
Lで折り返して、
位置xに行くまでの時間を求めます。
距離が 2L-xなので、時間が求まります。
その分遅らせればよいことになります。
忘れやすいのが、固定端の場合、π足します。
ひっくり返しての操作になります。
うっかり忘れやすい部分なので、
しっかり意識しておきましょう。
さらに波を具体的な形式にして
合成波を実際に式化します。
1),2)は実際に解いてみてください。
3)を考えてみてください。
以上になります。
ずれのπを
忘れないようにしてください。
3) 合成波の計算です。
そのまま足します。
このままだと、定常波に
なっているかわからないので、
ここから積の形にします。
三角関数の和⇒積の公式を
利用します。
数学処理なので、
後で説明します。
積の形にすると、
時間の項と位置の項に分かれます。
位置の項をA(x)とすると、
cosとA(x)の積の表現で、
波の式になっています。
この時のA(x)は、定常波の振幅になります。
振幅は正なので、絶対値になります。
位置による関数で、sinの関数なので、
位相が0とかπだと常に0になります。
ここが、節の位置になります。
また、π/2や3π/2だと最大値をなり
腹になります。
振幅の情報から、
節や腹の位置を求めることができます。
多くの問題では、
この段階までの計算や理解が問われます。
このレベルまでは、
確実に求められるようにしておきましょう。
定常波の計算では、
非常に重要なポイントです。
多くの場合、問題文に記載されています。
そのまま使えばよいのですが、
混乱しやすく、
間違えやすい箇所でもあります。
そこで、以下のように整理して覚えておくと、
ミスを減らすことができるでしょう。
この公式は、
加法定理(sin・cos)の和や差から
導くことができます。
ただし、公式を丸暗記しようとしても、
忘れやすいので注意が必要です。
sin-sin,cos-cosで積が、
どのような式に変形されるのか、
イメージを持つようにしましょう。
また、この公式を使う際には、
(α + β)/2 や (α − β)/2 の計算が必要になります。
さらに、
式の前につく「2」を忘れやすいため、
意識して確認するようにしてください。
(α+β)/2 , (α-β)/2を
それぞれ別々に計算してから
式に代入するようにしましょう。
このままでも問題ありませんが、
x の前にマイナスがつく形が気になる場合は、
符号(−)を前に出して
整理しても構いません。
計算ミスを防ぐために、
落ち着いてゆっくり書きながら
進めることが大切です。
また、定常波になる場合は、
x の関数と t の関数に分かれる形になります。
もし、そうなっていない場合は、
計算に誤りがある可能性が高いと
考えて見直しましょう。