波動のグラフ

波を表現する際には、

グラフを用いることが

よくあります。
グラフを通して、

波を表すさまざまな

物理量を読み取ることができます。

 

グラフの種類には、

主に次の2パターンがあります:

  1. y–t グラフ(時間と変位の関係)

  2. y–x グラフ(位置と変位の関係)

 

それぞれ意味や読み取り方が異なるため、

しっかりと理解しておきましょう。

 

また、波には大きく分けて

次の2種類があります:

 

    1.  横波

      (変位の向きが波の進行方向と垂直)

   

   2.  縦波

      (変位の向きが波の進行方向と同じ)

 

特に縦波は見た目で理解しにくいため、
横波として表現して考えるのが一般的です。

 

この項目では、
波のグラフから読み取れる

物理量に関する問題演習を

行っていきます。

 

 

苦手な人は、

まず解説を読んでから

問題に取り組むとよいでしょう。

 


1.波動のグラフ

y-t グラフ

波動のグラフ y-t

波のグラフは、

正弦波(sinやcosカーブ)で

表されることが多いです。

この項目では、y–tグラフについて説明します。

 

■  y–t グラフとは?

 

y–tグラフは、「ある1点の変位が

時間とともにどのように変化するか」

を表したものです。

  • 横軸:時間 t

  • 縦軸:変位 y

このグラフは、

単振動のグラフ(sinカーブ)として

考えると理解しやすいです。

  

■  グラフから読み取れる情報

  • 1周期分の横幅は、周期 Tを表します。

  • 縦軸の最大値・最小値は、"振幅 A(最大変位)"です。

  • y = 0 を通過する瞬間は、速さが最大になるタイミングです。

 

■ 単振動における速さ

 

単振動では、

変位の速さの最大値

(速さが最大になる瞬間の速度の大きさ)は

以下の式で表されます: 

vmax = Aω

 

■ 注意ポイント

 

y–tグラフは、

時間の変化に注目するグラフです。
単振動と似た形をしているため、

感覚的にも理解しやすいかもしれませんが、
横軸は「時間」であるということを

必ず意識しておきましょう。

 

y-x グラフ

波動のグラフ y-x

y–xグラフは、「ある時刻における

波の形(変位の空間分布)」

を表すグラフです。

 

■ y–x グラフとは?

  • 横軸:位置 x

  • 縦軸:変位 y

このグラフは、

 t = 0に、各点がどのように変位しているか

を示しています。

 

■ グラフから読み取れる情報

  • 1周期分の長さ(波の繰り返しの間隔は、波長 λ(ラムダ)です。

  • y軸の最大値・最小値は、振幅 Aで、最大(最小)変位を表します。

 

■ 波の進行方向に注意!

 

y–xグラフを読むときは、

波の進行方向がとても重要です。

例として、ここでは

波が右向きに進んでいる場合を考えます。
進行方向が異なれば、

同じ波でもグラフの形が変わって見えるため、

注意が必要です。

 

■ 波長と波の速さの関係

 

波の長さ(波長 λ)と速さ v、周期 T の関係は以下の通りです:

これは、

「1周期(T)の間に

波が進む距離が波長(λ)」

であることを意味しています。

 

■  単振動との違いに注意!

 

波の速度 v は、「波そのものが進む速さ」
一方で、単振動における速度は、

「媒質の点が上下に振動する速さ」です。

 

この2つは全く異なるものなので、

混同しないようにしましょう。

 

■   y–x グラフに違和感を

覚える場合は…

 

y–tグラフを元にして、

y–xグラフが作られます。
そのため、最初は違和感を持つ人も

少なくありません。

  • 違和感がない方は、しっかり理解できているので、次に進んでください。

  • 違和感がある方は、次の説明でその違いをじっくり確認しましょう。

波動のグラフ y-x よくわかる図

y–xグラフを理解するためには、

単振動の様子を時間ごとに

分けて考えるのが効果的です。

 

たとえば、

単振動する質点の動きを

周期 T を4分割(T/4ごと)に観察しながら、

右方向に波が進むように並べていくと、
その動きが空間に「波」として見えてきます。

これが y–x グラフの考え方です。

 

■ 「右が未来」だと、

違和感がある理由

 

y–xグラフを初めて見たときに、

「なぜこういう形になるの?」

と違和感を持つ人もいます。
その原因のひとつが、

「右側が未来」と考えてしまうことです。

実は、

"波は左からやってくる(右へ進む)"ので、

次の状態(未来の波)は左側にある

と考える必要があります。

 

■ 🎮 ゲームで考えてみよう!

 

横スクロールのシューティングゲームを

イメージしてみてください。
敵は左からやってくるので、

あなたが x=0 の地点で、
敵が上に現れるタイミングで

ジャンプして弾を撃てば、

T/4後にやってくる敵に命中できます。

この感覚をつかめば、
y–xグラフの「波の進み方」が

自然に理解できるようになります。

 

よく「波を少しずつずらして描く」

方法がありますが、
そんな必要はありません。


波は空間上の各点が“

ある決まった振動を時間差で

繰り返している”だけなので、
時間と位置の関係を正しく理解すれば、

未来の方向を考えれば、

次の位置が簡単にわかります。

 

■ ある位置での y–t グラフを描くには?

 

「x = 一定の位置での

y–t グラフを描く問題」では、
その位置の左側にある

y–x グラフの波形を、

時間の流れに沿って再現すればOKです。

 

つまり、波がその点に到達する順に

プロットしていけばよいということです。

 

まとめ

波動のグラフ y-t まとめ
波動のグラフ y-x まとめ

■ ここまでのまとめ

 

波を表すグラフには、主に2種類あります。
横軸が何を表しているかで、

グラフの意味が変わります。 

① y–t グラフ(横軸:時間 t)

    ・「ある位置における

        変位の時間変化」を表します

   ・読み取れる物理量:

           周期 T

           振動数 f

 

② y–x グラフ(横軸:位置 x)

    ・「ある時刻における

   波の形(空間分布)」を表します

 ・読み取れる物理量:

   波長 λ

   波の進行方向(→始点側が未来)  

 

■ 重要な関係式

 

波の速度Vに関して、

以下の式がよく使われます:

これにより、

波長・周期・振動数などの

物理量を計算できます。

 

■ 出題されるその他の物理量・内容

  • 単振動に関する情報

    • 角振動数 ω

    • 質点の最大速度: vmax=Aω

  • エネルギーに関する問題

    • 振幅 Aをもとにエネルギーを計算する

  • グラフを描かせる問題

    • 時間や進行方向を意識して、位置(未来の状態)を描く

 


2.縦波

波動のグラフ 縦波

■ 波動には2種類の波がある

 

波動は、その変位の方向によって

以下の2種類に分類されます:

 

 ① 横波

変位の方向が、波の進行方向に垂直

例:弦の振動、電磁波 など

グラフで表しやすく、

波動の学習では横波の表現が基本

 

② 縦波

変位の方向が、波の進行方向と同じ

例:音波

媒質の密度が高い/

低い部分(疎密)で表される

  

■ なぜ縦波も横波の形で表すのか?

 

縦波は本来、

媒質が進行方向に押し合い・引き合いながら進みます。
このままだとグラフにしづらく、

直感的に理解しにくいため、

以下のように扱います:

  • 縦波の変位方向を“仮に y 軸方向”とみなして

  • 横波のような形に変換してグラフで表します

こうすることで、

縦波も横波と同じ形式で

グラフに描けるようになります。 

 

■ 進行方向が逆でも

グラフの形は変わらない?

 

進行方向が逆になっても、

変位は y 軸方向で表すため、

グラフの形自体は変わりません。
ただし、密な部分(圧縮)と

疎な部分(希薄)の位置関係は

進行方向に依存するため、
「疎密の分布」を正しく

判断する必要があります。

  

■ 音波に注意!

 

音波は典型的な縦波ですが、
問題によっては「縦波である」と

明示されていないことがあります。

そのため、

次のような設問では注意しましょう:

  • 「疎な部分はどこか?」

  • 「密な部分は?」

  • 「このときの圧力変化は?」

→ 縦波の特徴(疎密)を意識しながら、解く必要があります。

 

✅ ポイントまとめ

 

  • 波の分類:横波・縦波

  • 縦波も「変位を y 軸として横波の形」で表す

  • グラフが同じでも、「進行方向の違い」による疎密の位置に注意

  • 音波は典型的な縦波、疎密を問う問題に注意!

波動のグラフ 縦波 疎密

■ 縦波の問題でよく問われること

 

縦波(例:音波)に関する問題では、

「疎な部分」「密な部分」の位置を

問われることがよくあります。

 

■ 疎密を見分けるには?

 

縦波は、変位が進行方向と

同じ方向に発生する波です。
しかし、通常は変位を

「y軸方向(上下)」として表現するため、
実際の変位に“戻して”考える必要があります。

 

【手順のポイント】

・グラフ上の変位の傾きを確認する

 

傾きが正なら、右側の点は左へ動いている

その結果、密な(押し合っている)

部分ができる

 

このように、変位の傾きの方向が、

疎密の位置を決定します。

 

■ 圧力に関する出題にも注意!

 

まれに、縦波の圧力変化を

問う問題もあります。

  • 密な部分(粒子が集まる) → 圧力が高い

  • 疎な部分(粒子がまばら) → 圧力が低い

この関係は、感覚的にも自然なので、

ぜひ押さえておきましょう。 

 

■ 疎密以外の問いは?

 

疎密や圧力に関する内容でなければ、
縦波の問題でも通常の

y–x グラフの問題と同じように考えてOKです。

たとえば、

  • 波長 λ の読み取り

  • 周期 T、振動数 f の計算

  • 進行方向の把握

などは、横波の問題と変わりません。

 

✅ ポイントまとめ

  • 縦波では「疎密の位置」が問われやすい

  • 疎密の判断には「変位の傾きの向き」がカギ

  • 密 → 圧力が高い / 疎 → 圧力が低い(感覚どおり)

  • 疎密に関係しない問いは、y–xグラフの通常問題として考える