直流回路

演習解説

a.c.e.は標準的な問題です。
b.d.f.はやや難しい問題になりますが、

直流回路の解き方を基礎からしっかり身につけていきましょう。

 

キルヒホッフの法則や、コンデンサにおける電荷保存則を

正しく立てられることが重要です。

 

また、解答にはいくつか数学的な処理も出てきます。

ですが、これらは入試でもよく出題される内容ですので、

もし初めて見るものがあっても大丈夫です。

一緒に数学の分野としても演習を重ねていきましょう。

 

一歩ずつ確実に取り組めば、必ず力がついていきますよ。


b.

[1]

回路方程式と第一法則を正しく

立てられるようにしましょう。

物理としてはここで一段落となり、

この先は数学的に電流を計算していくことになります。


回路方程式と第一法則さえ

正しく立てられていれば、心配はいりません。

 

もしここから電流をうまく求められなかった場合は、

「何を求めるべきなのか」を改めて確認し、求める順序を整理してから

計算に取り組むとよいでしょう。

 

焦らず順序を大切に進めていけば、必ず解けるようになります。

 

以下は、解答例となります。

 

2)

ジュール熱はRi^2,

仕事率は 電源の電圧 × 電源に流れる電流 になります。

それぞれを計算し、

和をとることで両者が一致することを確認しましょう。


以下に解答例を示します。

 

なお、仕事率から計算してジュール熱の和に

たどり着く方法でも構いません。
どちらの方法でも、

原理がきちんと一致することを体感することが大切です。

3)

最大となる R を求める問題です。

式が複雑なので、

まずは 定数を置き換えて整理 しましょう。
すると、分数の関数になります。

ここで、

式を見ても「どう処理すればいいのかピンとこない」場合は、
微分して最大値となる R を求めるのが基本です。

 

一方で、微分を使わない場合もあります。
分数型の関数の問題では頻出で、
相加相乗平均を利用する方法が有効です。

以下は、相加相乗平均を利用して最大値となるRを計算します。

相加相乗平均をまったく聞いたことない場合は

数学の項目あるので、参照してください。

ここでは、やや「無理やりな変形」に

感じるかもしれませんが、
式を整理すると

青で示した項が現れ、その積が定数 になります。

 

このような形になったら、
相加相乗平均を利用できるのがポイントです。

物理の問題では、相加相乗平均を利用する

ケースがかなり頻繁に出てきます。
特に入試問題では、

暗黙のルールとして

微積分を使わない方向で解かせる ことが多いです。

 

そこで、分数の式になり、分子が定数でない場合には、
「一度分子を無理やり定数に変形できないか」考えてみましょう。
もし形を整えられれば、

相加相乗平均を適用できるかどうかが見えてきます。

 

 

注意点としては、

不等号の向きを忘れてしまうことがよくあります。
そんなときは、 (a-b)² ≥ 0 という

当たり前の事実を思い出し、
変形してみると、

不等号の向きが自然に確認できます。

[2]

この問題も、

回路方程式とキルヒホッフの第一法則を使って解答していきます。
ただし、実際に電流を全部立てると、

電流の数が5個にもなり、計算がかなり複雑になってしまいます。

そこで、

このように同じ抵抗値が複数登場する場合は、

ぜひ 回路の対称性 を検討してみてください。

 

回路の対称性にはいくつかの考え方がありますが、
まず試してほしいのは、

回路を180°回転させて電源を逆にしてみる方法です。

 

すると、回路の形が元と同じになり、

対応する電流が同じ値になることを確認できます。
この工夫によって、

立てる式の数をぐっと減らすことができ、計算が楽になります。

対称性を利用すると立式の数を減らすことができました。
ただし、気をつけてほしいのは、

「同じ抵抗だから同じ電流が流れるだろう」と勝手に決めつけないことです。

対称性に気づいたら、

実際に図を描いて本当に同じ回路になるか検証することが大切です。

 

これを確認してはじめて、

「この抵抗には同じ電流が流れる」と安心して使えるようになります。

後は計算なので、解答例は以下になります。

5)

電源を流れる電流がわかったので、

合成抵抗を求めることができます。

 


コンデンサの回路問題では、

・回路方程式をたてる。

・電荷保存則をたてる。

をまず、しましょう。

d.

この問題では、上図の「島(節点)」において総電荷=0

であることに気づくのがポイントです。
スイッチが含まれているので少し見落としやすいですが、

電荷保存則はスイッチの有無にかかわらず必ず成り立ちます。

 

さらに、このタイプの「無限にスイッチがある回路」では、

漸化式を立てて考えることになります。
もし漸化式の扱いに不安がある人は、

この機会にもう一度しっかり確認しておくとよいでしょう。

 

1)

電荷を設定して、

回路方程式と電荷保存則を作ります。

電荷が同じとあるので、

電荷保存則を忘れても解けてしまいます。

2)

電荷を設定して、

回路方程式、電荷保存則をたてます。

計算して電荷を求めます。

ここまでが1回目の操作です。

 

3)

2回目の操作 になります。
同じように、回路方程式と電荷保存則を立てて考えていきましょう。

ここでは、

コンデンサー  に蓄えられる電荷を としています。
最終的な値()とは区別するためにこうしていますが、

もちろん としてしまっても構いません。

こうした整理をしておくと、

あとで漸化式を立てるときにスムーズに進められますよ。

 

 

また、電荷保存則は「直前の値」ではなく、

常に「初期値」から考える方が計算が楽になることが多いです。
この問題では、

初期値を常に 0 として扱ってよいので、その点も意識してみてください。

4)

2回目後半です。

Q2は正規のQ2として

同様に、

回路方程式、電荷保存則をたてます。

ここで、2回目終了です。

5)

この問題では

「n−2回スイッチ操作をした後の状態」となっているので、
実際には「すでに2回操作した後、n回目の電荷を求めなさい」

という意味になります。

 

では、どうすればよいか?
基本は (n−1)回目の状況を仮定して、

その次の n回目の電荷を求める という手順になります。
(言い換えれば、n回目 ⇒ (n+1)回目 の関係式を立てる、ということです。)

 

実際の計算に入る前に、

まずは (n−1)回目の電荷の状況を整理しておくとスムーズです。

例えば、数列のように

Q3nとしても良いです

と添字をつけて表す方法もありますし、

ここではシンプルに Q3(n) を添える書き方にしています。

 

電荷を設定したので、

実際に操作を行います。

まず前半です。

同様に、

回路方程式、電荷保存則をたてて、

Q1を求めます。

後半です。

同様に、

回路方程式電荷保存則を立てます。
今回求めるのは  の電荷なので、

途中で現れる  を消去していく計算になります。

この手順を進めると、 の漸化式が得られます。
したがって、この漸化式を解くことが目標です。

この漸化式は解けますか。
解けない場合は、

いちど参考書で漸化式の解法を確認してから取り組んでください。

 

この漸化式を解ける人は

少なくないと思いますが、
「公式として一般解を覚えている人」は

意外と少ないのではないでしょうか。

 

この2項間漸化式は、

確率分野や他の漸化式の問題でも頻出です。
そのため、

基本的には一般解を覚えておく方が有利だと思います。

上位層の受験生は、

すでに公式を覚えていて、数秒で答えを出してしまいます。
もちろん、

αを求めて式を変形し、等比数列に持ち込むことで解けますが、
どうしても数分かかってしまうことが多いです。

 

ですから、

漸化式の解法が理解できている人ほど、

一般項を公式として覚えてしまうことを強くおすすめします。
本番での時間短縮につながり、得点力アップに直結しますよ。

これを利用して、Q3を求めます。

6)

5)ができた人への

ボーナス加点問題です。

最後に仕上げをしてみましょう。


n \to \infty
とすると、分数項が 0 に近づきます。
したがって、

極限値として  の最終値 を求めることができます。

 

その後、

も自然に求められ、問題は終了です。


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